■がむばれ!八葉! 【その8・ちもりんの入水失敗】
とある時空の壇ノ浦──
源平の最終決戦は、今まさにクライマックスを迎えていた。
「じゃあな…… 源氏の神子……」
望美との戦いに敗れ、後がないと悟った知盛はニヤリと笑うと空(くう)に身を躍らせた。
「知盛っ !!」
ザッパーーーンッ !!
大きな水音と共に、知盛は昏い海の底へと沈んでいく。
「今よっ !!」
鋭く張り上げた望美の声を合図に、水夫たちが一斉に縄を引っ張った。
そして──。
網に絡まった知盛が海から引き揚げられたのは、まもなくのことだった。
望美は仲間たちに手伝ってもらい、溺れて気を失っている知盛の胸を押して水を吐かせると、知盛は目をしばたいてうっすらと瞼を開いた。
「ふふん、残念だったわね。海の底の都とやらに行けなくて」
知盛を見下ろしながら、望美は口の端を上げて不敵に微笑む。
一応傷の手当をしておこうと知盛の鎧を剥ぎ取ると、傷が痛んだのか知盛は顔をしかめ、うっ、と呻いた。
だが、身体を動かせないのだろう、知盛はされるがままになっていた。
「毎回毎回同じ死に方されちゃ、こっちは寝覚めが悪いのよね〜。悪いけど、網を仕掛けさせてもらったんだ〜♪」
「………?」
知盛は何か言おうとしたが、ゲホゲホと咳き込んで言葉にならない。
「いいのいいの、こっちのことだから……… あれ? これは…?」
望美が目を留めたのは知盛の腰に下げられた巾着袋だった。
先ほど戦った時には気づかなかったが、左右に3つずつ下げられている。
そのうちの1つを持ち上げてみると、ずっしりと重い。
袋を開き、中身を出してみると、握りこぶし大の石がごろごろと出てきた。
「……なによ、これ…?」
次に望美の目に留まったのは、知盛の肩から外した肩当て。
よく見ると、裏は木の板で裏打ちされ、その板の途中に取っ手のような縄が付けられ、板の端からは長い縄が2本伸びている。
防具として使用するには必要のない細工であることは明らかだった。
「ふむ……」
望美は肩当ての1つと石を1つ、ひょいと拾い上げると、眉間に皺を寄せて考え込んだ。
しばらくの後、何かに思い当たった望美はすっと顔を上げた。
【プチあとがき】
ちょっと思いついたので書いてみたです、はい。
最後の選択肢でストーリー分岐します。
お好きなほうへお進みくださいませ。
【2006/10/06 up】