■がむばれ!八葉! 【その9・会話は続くよどこまでも】 将臣

 とある時空の倶利伽羅峠──。
「よ、お前ら、こんなところで何やってんだ?」
 不意に後ろから声をかけられ、望美が振り向くと、懐かしい顔がそこにあった。
「あ、将臣くん、元気そうだね!」
「ああ、お前らもな」
 話を聞けば、将臣はこの倶利伽羅で怨霊を増やそうと画策する平 惟盛の計画を止めに来たという。
 手を貸してくれ、という将臣に、目的を同じくする望美たちは二つ返事で頷いた。
 地獄谷と葵塚に仕掛けられた呪詛の人形を浄化したが、特に変化も見られず、仕方なしに不動堂に戻ることになった。

 山道を歩きながら、話ははずむ。
 ふと、望美が口元を押さえ、くすくす笑い出した。
「気持ち悪い奴だな、思い出し笑いか?」
「やだな、そんなんじゃないよ。あのね、将臣くんってウル○ラマンみたいだなって思って」
「はぁ? なんだそれ?」
「だって、いきなり現れて、用事が済んだらさっさと帰っちゃうでしょ。もしかして将臣くん、胸にカラータイマーついてる?」
「んじゃ、確かめてみるか?」
 将臣は陣羽織の前をガバッとはだけると、望美に向かって胸を突き出した。
「あははっ、あるわけないじゃない」
 ケラケラと笑いながら、望美は将臣の胸当てをパシンとはたく。
「お前が言ったんじゃねぇか。ま、この格好じゃウルト○マンっていうより、時代劇だよな」
「それもそうだね。じゃあ、将臣くんは『必殺仕○人』かな?」
「おっ、いいなそれ。んじゃ、お前たちはさしずめ『水戸○門』だよな」
「えぇ〜っ、越後のちりめん問屋ぁ !?」
「そ。お前がご隠居様だろ? で、九郎が助さんで、格さんはリズ先生辺りだよな。八○衛は景時なんだろうな。で、かげろ○お銀が朔ってとこか」
「ええっ !? まさか朔の入浴シーンを期待してるとか !?」
 望美は青い顔で将臣の腕をガシッと掴む。
「んなわけねぇだろ、他に当てはまる奴がいねぇんだから。あ、お前の入浴シーンなら喜んで見てやるぜ?」
「やだ……もう、将臣くんったら…♥」
 望美は真っ赤に染まった頬を押さえ、将臣に軽く肩をぶつけた。

 不動堂に到着しても、二人の会話は止まらない。
「だけど、お前って時代劇とか好きだったんだな」
「うーん、嫌いじゃないよ。えーっと、何て言ったかな……そうそう、『完全超悪』っていうんでしょ、ああいうの。分かりやすくていいじゃない?」
「あなたは……!」
「かんぜ……お前な、それを言うなら『勧善懲悪』だろ。完全に悪を超えてどうすんだ? 極悪非道か?」
「行きなさい! 怨霊・鉄鼠!」
「キキィッ!」
 ゴスッ !!
 飛びかかって来たモノの鼻面に将臣の裏拳がヒットし、ありえない方向へ首が折れ曲がる。
 望美が虫でも払うかのようにひらりと手を一振りすると光の粒が辺りに舞った。
「クッ…私の可愛い鉄鼠を…!」
「えっ、そうなのっ !? じゃあ、私、ずっと勘違いして覚えてたんだ…」
「…私を封じられますか?」
「お前、勘違いにもほどがあるだろ」
「死になさい!」
「「やかましいっ !!」」
 将臣が振り向きざまに太刀を薙ぎ上げ、望美の突き出した手がぽぅっと白い光を帯びる。
「グアァァァァッ!」
 次の瞬間、光の粒がきらきらと散っていった。
「…………あれ…? 今の……」
「惟盛……だったな」
 二人の会話についていけず少し間を開けて歩いていたためにようやく不動堂に到着した仲間たちが、ぽかんと口を開けて今の様子を眺めていた。

「じゃあ、またな」
「うん、また会おうね、将臣くん!」
 惟盛の陰謀をあっさり片付けた望美たちは、それぞれの場所へと帰っていく──。

〜 おしまい 〜

【プチあとがき】
  あははー。
  「勧善懲悪」という言葉から思いついたお話でございます。
  やっぱりあたしの中で将望コンビは最強なのかもしれない。
  んー、煮詰まるとこのコーナーに逃げ込んでくるあたし(笑)
  それにしても、惟盛が不憫だ……。

【2006/11/10 up】