■がむばれ!八葉! 【その6・リズ先生の欲望】
とある時空にて。
「将臣く〜ん! 私も南の島へ連れてってぇ〜♥」
「おう、行こうぜ望美!」
「「さよ〜なら〜〜」」
そう言って、神子は平家の船で旅立った。
別の時空にて。
「九郎さん! 私の世界へ、いざっ!」
「わかった望美! 俺は行くぞ、お前の世界へ!」
「「さよ〜なら〜」」
そう言って、神子は元の世界へと戻っていった。
違う時空でも。
「望美、オレの嫁になれ!」
「うん、私を熊野に連れてって♥」
「望美さん、薬草を摘みに行きますよ」
「は〜い、たくさん採れるといいですね♥」
「先輩、向こうに帰ったら何したいですか?」
「そうね〜、遊園地デートしよっか♥」
「望美ちゃ〜ん、洗濯物洗い終わったよ〜」
「はーい、干しちゃいましょ。今日もよく乾きそうですね♥」
「敦盛さ〜ん、市に行きましょ♥」
「ああ、神子のような、可愛らしい物が見つかるといい…」
「白龍〜、また空を飛んでみたいな♥」
「うん、神子が望むなら」
「望美、神泉苑に舞を見に行かない?」
「行く行く! 帰りに何かおいしいもの食べて帰ろうね♥」
「銀〜、私の世界に来てくれる?」
「はい、神子様とならばどこへでも参ります」
そんなこんなで、お持ち帰りしたり、お持ち帰りされたりする、何人もの神子を見守り続けたリズ先生。
『神子……、私と神子が共に在る時空は、何処なのだろうか…』
そんな思いを心に抱きながら、悶々と日々を過ごしていた。
そしてある日、リズ先生のもとに望美が息せき切ってやって来た。
「先生っ! 私と一緒に、私の世界に行きましょう!」
ついにっ! ついにこの日がやって来たっ!
ガッツポーズと共に、天を仰いで嬉し涙を流すリズ先生。
「い、いいのか、神子? 私と共に──」
「はい! だって、面倒くさいから放っといたけど、先生END見ないと知盛落とせないんですもの♥」
ポッと頬を染める望美。
先生の嬉し涙は、一転、絶望の涙へと変わってしまった。
その日以降、リズ先生の姿を見た者はおらず、望美も知盛に見向きもされなかったという。
〜おしまい〜
【2005/10/14up】