■再会の後で
※初々しいキス10題 09:思い出してゴロゴロ (お題提供:TOYさま)
「── はぁ〜……」
風呂上がりで心地よい疲労感のある身体を畳の上に投げ出して、龍馬は天井に向かって深い息を吐く。
いろんなことが怒涛のように襲ってきた今日一日。
自分を庇って怨霊の毒に倒れたゆきを看病しているところに陽炎の襲撃、そして彼女の姿は消えた。
そして戻って来た彼女は、やはり十年前に江戸で出会った『お嬢』その人だったことが判り。
ごろんと転がりうつ伏せて、手の甲に顎を乗せる。
「あー……戻ってきてくれて、本当によかったなぁ……本当に」
嬉しくて、泣けるほど嬉しくて、ほとんど衝動的に口付けたのは、ほんの一刻ほど前のことだ。
と、考えた途端、柔らかい感触が唇に蘇ってきた。
顔が一気に熱くなる。
「いやいやいや、明日は東照宮で最後の戦いだってのに、こんなこと考えてちゃいかんよな」
再びごろりと転がって、ぐっと握った拳を突き上げた。
「── 明日は天海を倒す!
んで、絶対にこの手でお嬢を守ってみせる!」
ふいに彼女の顔が脳裏に浮かんだ。
唇を離した後の、目を潤ませ、頬を染めた可愛らしい顔が。
「本当にお嬢は可愛いよなぁ──
あの顔は、絶対に誰にも見せられん!」
三度転がって、うつ伏せの大の字になる。
まるで畳に抱きついているみたいだな、と思った。
「……抱きつくんなら、断然お嬢の方がいいよなぁ」
あの細い身体に抱きついて、しっかりと抱きしめて、それから──
「── あー、もう一回してえぇぇぇっ!」
考えただけで身体がむずむずして、身の置き所に困って、もうどうしようもなくなってゴロゴロと畳の上を転がった。
壁に当たって進めなくなったので、元来た方へゴロゴロ戻る。
するとすぐに何かにぶつかった。
見ればそこには二本の足。
「こんな夜半に暴れるな、龍馬。
埃が立つ」
「ハハッ、すまんすまん」
見下ろしてくる高杉にとりあえず詫びを入れる。
「── で、何を『もう一回』なんだ?」
「っ !?」
がばっと立ち上がり、高杉の肩をバンバンと叩きながら、
「いや、お前にゃなんも関わりのないことだ!
うん、全く知らんでいい!」
じゃあな、と部屋を飛び出した。
少し夜風に当たって湧き上がってくる高揚感を鎮めなければ、今夜は眠れそうになかった。
〜おしまい〜
龍馬さんごめん、ほんとにごめん(笑)
なんか彼はこれくらい無邪気だといいなー、と(笑)
短いです、すみません。
このお題はこんな感じで消化していこうかと。
【2012/05/21 up】