■小ネタツイートLog【その18】 龍馬

 現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
 新ネタは上記アカウントにてご覧ください。
 ※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)

【#171/同題遙か「与」】
 二つの世界の存亡は、自分の行動ひとつひとつに委ねられている。
 与えられた神子としての使命の重さを、改めて思い知らされた。
 氷のように冷たい指先をぐっと握り込む。
 不意に拳を包んだ手は、手袋越しでも温かかった。
 この温もりを二度と失わないためにも、前に進まなければ。

【#172/同題遙か「弄」】
 降りかかる運命に彼女はただ翻弄されているように見えた。
 いつからか強い意志が表れ、時折浮かべる思いつめた表情が痛々しくもあった。
 筋が浮き出るほど強く握り締められた拳にそっと手を添える。
「お嬢は俺が守る。 絶対にだ」
 氷が融けるように次第に表情が解けていった。

【#173/同題遙か「一寸」】
 通りかかった店先に木彫りの打出の小槌があった。
「一寸法師ですね」
「だな。 お嬢が法師みたいに小さかったら、懐に入れていつも一緒にいられるんだがなぁ」
「じゃあ龍馬さんが小さくなったら、私も懐に大事にしまっておきますね」
「いやいやいや、それはさすがにまずい」

【#174/同題遙か「第六感」】
「な?  俺の勘はよく当たるだろ?」
 嫌な予感がする、と龍馬が呟いた直後に現れた怨霊を一掃したところである。
「私が気付く前だったから、確かに第六感かもな」
 と笑う都。
「俺の勘だと、お嬢にゃこれから嬉しいことがあるぜ」
「え?」
 ん、と指差す先には団子屋が見えた。

【#175/同題遙か「疼く」】
 軋む身体を無理に起こせば、熱をもった傷が酷く疼いた。
 この痛みから彼を救えてよかった。
 けれど、あの場に残した彼は無事でいてくれるだろうか。
 龍馬さんなら大丈夫、きっとすぐに会える── 自分に言い聞かせながら、不安に疼く心を抑え込むように青い鱗を握り締めて祈った。

【#176/同題遙か「箱入り」】
「── どう見てもお嬢は箱入り娘だもんなぁ。 『うちの娘はやれん!』とか一蹴されちまいそうだよなぁ」
 丸めた背中が情けなさすぎる。
「ゆきの両親の前に、私が認めてやらないけどな」
「ぬわっ !?」
 本当は応援してるんだ。
 こいつの隣にいるときのゆきは幸せそうだから。

【#177/同題遙か「落葉」】
 ひらり、葉が落ちた。
 その木に残っていた最後の一枚が。
「ひとりぼっちになってしまったみたいで、悲しいですね」
「そうか?  ま、春が来るまでの我慢だ」
 表情は晴れない。
「お嬢についてる八枚の葉っぱは、そんじょそこらの嵐じゃ落ちないぜ」
「あ……八葉…」
 笑みが戻った。

【#178/同題遙か「悦」】
 その日、姿を現した龍馬はやけに嬉しそうだった。
「龍馬さん、いいことでもあったのか?」
 中岡が問うと、ニィッと笑って「これだ!」と小振りの風呂敷包みを掲げて見せた。
「お嬢がな、弁当作ってくれたんだ。 昼が待ち遠しいぜ!」
 ご満悦な様子に中岡はただ溜息を吐いた。

【#179/同題遙か「嫁」】
「あんたさ、嫁の一人や二人いてもおかしくない歳だろ?」
 年齢の話になって、都が言い放った。
「おいおい、嫁さんが二人もいちゃマズかろう」
 はは、と龍馬が笑う。
「それに俺は十年前からお嬢一筋だからな」
 都は赤い顔のゆきをバッと背にかばい、
「さてはお前ロリコンだな!?」

【#180/同題遙か「故郷」】
「おおっ!」
 感嘆の声を上げる龍馬。
 テレビに映るのは桂浜。
 異なる世界の、彼の故郷の風景だ。
「── お嬢、そんな顔しなさんな」
 くしゃりと頭を撫でられた。
「お嬢の世界に連れてきてくれて、ありがとうな」
 零れそうになった涙を見せたくなくて、飛び付くように抱きついた。

【2013/01/05 up】