■小ネタツイートLog【その14】 龍馬

 現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
 新ネタは上記アカウントにてご覧ください。
 ※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)

【#131/同題遙か「足跡」】
 砂浜の上に続く小さな足跡を辿っていく。
「あっ」
 派手に転んだ足跡の主はすぐに立ち上がり、こちらに大きく手を振った。
 幼い頃、砂だらけの世界で出会った優しい顔は、今は隣にあった。
 はたと後ろを振り返れば三組の足跡。
 満足して己によく似た幼子の元へと足を速めた。

【#132/同題遙か「暁」】
 坂本龍馬は闇に閉ざされた日本を暁へと導いた人物だと聞いた。
 未来を語る彼の豊かに変化する表情と、キラキラと輝いている瞳に思わず魅入られる。
「──ん?  すまん、こんな話は退屈だったかい?」
 いいえ、と首を振る。
「龍馬さんならできます」
 必ず、と無条件に信じられた。

【#133/同題遙か「鎖」】
「あ」
 何かを見つけた彼女が近付いてきた。
「弾丸なんですね」
 見知らぬ召し物と一緒に首に巻かれていた鎖に揺れるそれを細い指先でつまむ。
「本物じゃあないぜ?」
「ふふっ、本物だったら、ちょっと怖いです」
 至近距離の微笑みに、首周りのくすぐったさを感じなくなった。

【#134/同題遙か「捕」】
「助けて!」
 ぶつかるようにして彼女の腰に抱きついてきたのは、逗留中の宿の悪戯息子だ。
「お侍さん!  その子捕まえとくれ!」
 聞こえてきた女将の声に、反射的に少年ごと彼女をぎゅっと抱きしめる。
「よーし、捕まえた」
 息苦しくてじたばたする少年がちと邪魔だなと思いつつ。

【#135/同題遙か「砕」】
 ガチャン!
 床に散らばる陶器の欠片は彼女のお気に入りのカップだ。
「怪我ないか、お嬢?」
 蒼褪めた顔で小さく頷く彼女の頭をくしゃりと撫でて、胸に引き寄せる。
「なーに、俺が直してやるさ── 何度でもな」
 砕けた欠片を集めようと屈んだ背中に温もりがしがみついてきた。

【#136/同題遙か「導く」】
 お嬢、と彼は私を呼ぶ。
 それは人懐っこかったり、気遣わしげだったり、元気で楽しそうだったり、辛く悲しそうだったりもした。
 最初は鈴の音に導かれてこの世界に来た私だけれど、その後はこの国を思って一歩も二歩も先を行く彼の呼び声に導かれて今までやってこれたのだ。

【#137/同題遙か「にやり」】
 これまでのことを思い出すうち、お礼を言いたくなって。
 なぜか鼻先数センチに彼の顔がある。
「お嬢は最後まで見届けたいんだな?  ということはずっと俺の傍にいてくれる、ちゅうことでいいんだな?」
「…はい」
「そうかそうか」
 にやりと笑う顔がやけに男臭い気がした。

【#138/同題遙か「虫」】
 アクティブな彼だけれど、所謂『本の虫』という面も持っている。
 今日も整理するはずの本に囲まれ、座り込んだまま数時間。
「…しまった!  つい読みふけっちまった!」
「構いませんよ。 でも──」
 彼の背後に回り込み腰を下ろす。
「ちょっと寂しいから、背中だけ貸してくださいね」

【#139/同題遙か「灯」】
 赤い実が鈴なりの鬼灯の枝。
 二つもぎ取り、丸い実の中身を出して口の中へ。
 膨らませて舌で潰すと、きゅっと音が鳴る。
「ま、そのうち鳴らせるさ」
 音が出せずもごもごする彼女の口元を見ているうち、鬼灯よりも赤い彼女の唇を鳴らしたほうが余程いいと気付いて手を伸ばした。

【#140/同題遙か「倒」】
「お嬢!  っぬわっ!」
 駆け寄ろうとしたら蹴躓いて図らずも彼女を押し倒す。
 咄嗟に抱き込んだから、怪我はないはずだ。
「だ、大丈夫ですか龍馬さんっ」
「すまんすまん、お嬢こそ平気か?」
 気づけば鼻先が触れそうな至近距離に愛らしい赤い顔。
「ここが往来じゃなきゃあなぁ…」

【2013/01/05 up】