■小ネタツイートLog【その10】
現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
新ネタは上記アカウントにてご覧ください。
※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)
【#91/同題遙か「ゆるむ」】
「うわっ !?」
通りかかった部屋の中に見えたのは、胡坐で布団に包まる龍馬。
「……風邪か?」
「いやぁ、お嬢の前でちょっと咳払いしたら、申し訳ないくらいに心配されてな。
今は台所で手料理を作ってくれてる真っ最中だ」
でろでろに緩みきった笑顔に都は溜息を吐いた。
【#92/同題遙か「噂」】
彼女を誘って向かったのは宿に近い小さな川。
「あの、龍馬さん?」
「ま、見てなって」
闇が濃くなった頃、茂る草の中にほつりほつりと生まれるあえかな光。
「わ……蛍!」
「ああ、綺麗なもんだ」
ここで一緒に蛍を見た男女は結ばれる── 昼間耳にした噂の真偽のほどは如何に。
【#93】
彼女の世界には面白いものがたくさんある。
その一つが『携帯電話』だろう。
遠くにいる人間と話ができるし、めーるとかいう文まで送れ、更には色つきの写真まで撮れるのだから驚きだ。
「あ、電池切れそう」
呟いた彼女は机の上の妙な形の受け皿にガチャリと携帯をはめ込んだ。
「お嬢、そりゃあ何だい?」
「これですか?
充電器ですよ。
電池がなくなったらこうして充電すれば、また使えるようになるんです」
「へぇ、くたびれたら旨いもん食ってしっかり寝りゃあ次の日にゃ元気になってる、ってのと似てるな」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
/
新しいもの好きの龍馬ではあったが、元いた世界とは違いすぎる文化に早く慣れようと頑張った分、疲労も溜まっていた。
大半は夜遅くまで本を読んだりテレビを見たりの寝不足なのだが。
「龍馬さん!?」
よろよろと歩いていたところに駆け寄ってくる彼女。
「お嬢〜」
情けない声が出た。
「大丈夫ですか?」
「うぅ……」
ふらりと覆い被さるようによろけた龍馬の身体を、ゆきは胴を抱き締めるようにして受け止めた。
もちろん本当に倒れるつもりはないから、彼女ごと転んでしまうようなことはない。
「お嬢……俺は携帯電話になっちまった……」
「えっ!?」
「電池切れだ……充電させてくれ……」
彼女の細い身体をきゅうっと抱き締める。
「……はい、いつでもどうぞ」
小さな声と、抱き締め返してくる腕の感触に、龍馬の口元はついつい綻んだ。
『充電』すると身体に力がみなぎってくるのは本当のことらしい。
【#94/同題遙か「三人組」】
年長の三人が集まって難しい顔で話をしていた。
二人は普段と大差ないが、彼は随分と印象が違う。
いつもなら太陽みたいに笑っているのに、今は真剣な鋭い眼差し。
「ん?
どうしたお嬢?」
気付かれていつもの笑顔。
「い、いえ…」
かっと顔が熱くなって、心臓が跳ね回った。
【#95/同題遙か「頼」】
「お嬢!
頼みがある!」
異様な切迫感で駆け寄ってきた龍馬。
よくないことでも起きたのかと身構えた。
「どうしたんですか」
「抱き締めさせてくれ!」
返事をする暇もなくがばっと抱きつかれて。
「よし、今日も張り切っていこうぜ!」
ぽん、と肩を叩いて軽やかに走っていった。
【#96/同題遙か「掴む」】
興味本位で借りた銃はずっしりと重かった。
命をも奪う武器だというのに、この銃でいつも守られているのだと思えばどこか温かい気もする。
見様見真似で構えてみた。
ふわりと温かくなった背中、グリップを掴む手に添えられた大きな手。
確かに彼に守られていると実感した。
【#97/同題遙か「宿る」】
一本の木の所々に明らかに違う種類の葉が茂っていて。
「ああ、あれはヤドリギだな」
説明を聞いて、まるで自分のようだ、とゆきは思う。
この世界という木に、別の世界から落ちてきた種。
そう言うと彼は不満顔。
「ありゃあ鳥が食べた実が……いや、とにかくお嬢はお嬢だ!」
/
「そういえば、クリスマスにはヤドリギを飾るんです」
「くりすます?」
「冬にあるお祭りみたいなものです。
ヤドリギの下に立ってる人には……あ」
「立ってる人には、なんだ?」
「えと……キスしてもいいって…」
「へぇ」
「ど、どうして近づいて…?」
「『きす』してもいいって言ったのはお嬢だぜ」
【#98/同題遙か「響」】
十年かけて再会し、ようやく交わした想いを玉響の夢で終わらせてたまるものか!
圧倒的な神の力に悲鳴を上げる身体を奮い立たせ、仲間と共に渾身の術を放つ。
攻撃が緩んだ瞬間、
「お嬢!」
視線を送れば、しっかりと頷き返す彼女。
神すら鎮める封印の言霊が響き渡った。
【#99/同題遙か「傘」】
青空は俄かにかき曇り、落ちてきた大粒の雨に慌てて民家の軒先に飛び込んだ。
暫く待ってもやみそうにない。
「仕方ない、これ被って走るか」
羽織の紐を解こうとするのを留めるようにそっと重ねられた彼女の手。
「もう少しここにいませんか?」
傘がなくてよかった、なんて。
【#100/七夕ネタ】
「あー、降っちまったなぁ」
「そうですね……残念」
雨に湿った風がさわさわと笹飾りを揺らす。
「一年に一回しか会えんのに、気の毒なこった」
「でも、きっと雲の上で誰にも見られずにゆっくり会えるから、よかったのかも」
前向きな考え方は、さすが世界を救った龍神の神子というべきか。
【2012/07/17 up】