■小ネタツイートLog【その9】
現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
新ネタは上記アカウントにてご覧ください。
※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)
【#81/同題遙か「雫」】
ぽたり、と落ちた琥珀色の雫が、丸いガラスに囲まれた水面に波紋を作る。
「── 落ちきりましたね」
「だな」
二人並んでテーブルに貼りつくようにして見つめるのはコーヒーメーカー。
物珍しそうに何でも面白がってくれる彼の初めてのコーヒーは、少し甘めのカフェオレにしよう。
【#82/同題遙か「切っ先」】
すっと刀を構える。
稽古用の木刀ではなく、真剣のつもりで。
その切っ先にまで意識を集中させ──
「まいど!」
「ご苦労さまでした」
道場の外から聞こえてきたのは出入りの商人と、彼女の声。
「坂本!
集中しろ!」
「は、はいっ!」
躍る心に構えがぶれて叱咤が飛んできた。
【#83/同題遙か「追」】
脱兎の如く逃げ出した彼女を追いかける。
足の速さには自信があるから、すぐに追いつき捕まえた。
「どうしたってんだ、お嬢?」
「だ、だって……いつもと、違うから」
なるほど、理由が分かった。
「何度だって言うさ──
お嬢、愛してるぜ」
彼女の顔が熟れた鬼灯のようになった。
【#84/同題遙か「毒」+続き】
「嬢ちゃん、ちょっくら龍馬を借りてくぜ」
「どこへ行くんですか?」
「島原にな」
「島原?」
「……男が癒しを買う場所だよ」
「癒し?
……龍馬さん、疲れてるんですか?」
「夢の屋!
誤解を招く言い方するなって!
あああ、お嬢もそんな気の毒そうな目で見んでくれ!」
ただの密談なのに。
/
「どうしたんですか、龍馬さん?」
「いや……どうもお嬢に避けられてるみたいでな」
「……It will be so.(そうでしょうね)」
「ん?」
「いえ、ゆきが『島原』を気にしていたので、説明して差し上げたのですよ。
私も話に聞いたことしかありませんが」
「アーネストよ……余計なことをしてくれるなって……」
/
「気の毒なことだったな、龍馬」
「何のことだ?」
「先日の島原での会合の件、蓮水に話しておいた」
「おおっ、晋作っ!
そりゃありがたい!」
「抱きつくな、うっとうしい」
「──あっ、ごめんなさい」
「お嬢!」
「あの……龍馬さん、女の人に興味なかったんですね…」
「いや、そりゃ違う!
誤解だ!」
【#85/同題遙か「賭け」】
「うーん」
両手で包んだ彼女の顔をまじまじと見つめ、
「──『男』、だな」
「そうですか?」
「ああ、俺の勘は当たるぜ?
賭けたっていい」
「もう……誰と勝負してるんですか?
私はどちらでも──」
まだ膨らんでもいないお腹をそっと撫でる、病院からの帰り道。
【#86/同題遙か「初」】
「ちょ、ちょっと待ってくれ、お嬢!」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
「いやいやいや、緊張するって!」
「大丈夫、いつもの龍馬さんでいてください」
ガチャッと開けたのはすっかり見慣れた、けれど雰囲気の違う扉。
ゴクリと唾を飲む。
これから彼女の両親と初の対面。
【#87/同題遙か「騒」】
夕餉はいつしか酒宴となり。
楽しい喧騒の中、皆が少し酔った赤い顔で笑っている。
皆がいる──
ただそれだけなのに。
「お嬢、どうした?」
呼ばれてはっと顔を上げる。
「……嬉しくて」
「ああ、わかるぜ。
嬉しい時も涙が出ちまうんだよな」
大きな掌がそっと頬を拭ってくれた。
【#88/同題遙か「誘惑」】
それは抗い難いほどの強烈さで龍馬を誘っていた。
ソファで眠る彼女の僅かに開いた桜桃のような唇。
吸い寄せられるように顔を近付けると、触れる目前で瞼が開く。
「もうちっと休んでな」
軽く唇を啄ばめば、恥ずかしそうに頬を染めた彼女は再び穏やかな眠りに落ちていった。
/
【誘惑/残念Ver.】
それは抗い難いほどの強烈さで龍馬を誘っていた。
ソファで眠る彼女の僅かに開いた桜桃のような唇。
吸い寄せられるように顔を近付け──
「何をしている」
振り返れば瞬の鬼の形相。
「な、何もしてない!
唇を奪おうとか考えてもないって!」
「……失せろ」
ギロッと睨まれて、すごすごと退散。
【#89】
「──思い、思われ、振り、振られ、って言うんです」
顔の前で十字を書くように指差していく。
「じゃあ、今のお嬢みたいに鼻の頭にできちまったら、何になるんだ?」
「あ……」
なぜか真っ赤になって俯く彼女。
「えと……両思い、です」
「そりゃあ困ったな、お嬢のそのにきび、ずーっと治らんぜ」
【#90/同題遙か「忍ぶ」】
「ゆき?」
「…えっ、なに?」
最近の彼女はこんな風にぼんやりと何かを見ていることが多くて。
その視線の先にはいつも──
認めたくなくて、都はかぶりを振った。
「いや、まさかなー。
ゆきが坂本のこと気にするなんて」
近くにいた高杉が、ふ、と鼻で笑う。
「そうとも限らん。
『忍ぶれど色に出でにけり』と言うからな」
「へー……って、それ、どういう意味?」
【2012/06/28 up】