■小ネタツイートLog【その7】 龍馬

 現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
 新ネタは上記アカウントにてご覧ください。
 ※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)

【#61/同題遙か「爪」】
「痛っ」
「どうした!?」
「いつの間にか爪が欠けてて」
 手を取って見れば腕に引っ掻き傷。 欠けて尖った爪でついたらしい。
「── こら坂本!  何ゆきの手を握ってんだ!」
「ただ握ってていいなら、ずっとそうしてたいけどな」
「えっ?」
 ここで待ってな、と宿の帳場に鋏を借りに行った。

【#62/同題遙か「不足」】
「何か足りないものがあれば」
 と聞いてくる彼女は、これから都と買い物に出かけるらしい。
「んー、そうだな」
 考えながら彼女をきゅっと抱き締める。
「あ、あの、龍馬さん?」
「── よし、気をつけて行ってこいよ」
 解放して送り出す。
 足りないのは彼女を独り占めする時間。

【#63/同題遙か「環」】
「まるいものって心がほんわりしませんか?」
 団子を見つめていた彼女がふと呟いた。
 そうだな、と同意すれば嬉しそうに笑う。
「あ、ドーナツ食べたいな」
「どーなつ?」
「はい、丸く環になったお菓子です。 いつか龍馬さんと一緒に食べられるといいな」
 確かに心がまるくなる。

【#64/同題遙か「一歩」】
 楽しくも少し不安な空の旅を終え、降り立った異国の『空の港』。
 大きなガラスの扉の前で、珍しく彼女のほうから腕を組んできた。
「龍馬さん、最初の一歩は一緒に」
 にこりと笑う。
「ああ、踏み出そうぜ……一緒にな」
 こうして彼女と共に、彼女の世界で生きていく。

【#65/同題遙か「癖」】
「どれにしようかな」
 茶屋の壁に貼られたお品書きを見上げ、顎に手を当て考え込んでいるゆき。
 その所作をどこかで見たような気がして、都は懸命に頭を巡らせ、ふと思い当った。
「なあ、ゆき。 お前、最近しぐさが坂本に似てきてないか?」
「えっ?」
 赤く染まった頬が答え。

【#66/同題遙か「かおり」】
 すんすん、と鼻を鳴らして、
「あれ?  龍馬さんも香水つけてますか?」
「おう、つけてるぜ。 首筋んとこに、ちょこっとな」
 顎を上げながら、彼女の方へ少しだけ身を屈める。
「何の香りだろう?」
 首筋に鼻先を寄せてくる彼女があまりに無防備で、思わず腕の中に閉じ込めた。

【#67/同題遙か「溺」】
「あー頭痛ぇ」
 久しぶりに旧友と飲んだら、今朝はこの有様。
「酒に溺れるなんざ、俺もまだまだだなぁ」
「毎日酔い潰れてるわけじゃないから、溺れるとは言いませんよ?」
「そうか?  だったら、俺はお嬢には溺れてるんだな」
 彼女の顔が酒に酔ったように真っ赤になった。

【#68/同題遙か「傍」】
「んー、筆に硯?」
「じゃあ……鉛筆と消しゴム」
「シャモ鍋に美味い酒!」
「おいしいケーキにおいしい紅茶!」
 挙げ始めればキリがない『傍にないと困るもの』。
「んじゃ、俺にはお嬢!」
 引き寄せてぎゅっと抱きしめる。
 そろりと回された手がきゅっとシャツの背中を掴んだ。

【#69/同題遙か「意識」】
「ごめんなさい」
 罰の悪そうな顔で彼女が詫びた。
 謝られるような心当たりはまるでない。
「その……目、逸らしちゃって」
 確かに最近、ふと目が合った時に視線を外されることが度々あった。
「気にしなくていいぜ」
 それは彼女が自分を意識し始めたということだから。

【#70/同題遙か「すくう」】
 強い日差しを避けて入った喫茶店。
 注文は彼女任せ。
 運ばれてきたのは──
「おっ、こーら!」
「の上にアイスを浮かべたコーラフロートです」
 ひと匙掬って口の中へ。
「……おおおっ!」
 感動のあまり子供みたいに口の端に付けてしまったアイスを、彼女がそっと拭ってくれた。

【2012/06/13 up】