■小ネタツイートLog【その6】 龍馬

 現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
 新ネタは上記アカウントにてご覧ください。
 ※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)

【#51/同題遙か「自惚れ」】
「自惚れてみるってのはどうだ?」
 落ち込むゆきにかけられたのは、そんな意外な言葉。
「もちろん思い上がっちゃあいかん。 けどな、自分に惚れる── 自分を好いて信じてやらにゃ、先へは進めん。 俺の大好きなお嬢を、お嬢自身も好いてくれよ」
ふっと心が軽くなった。

【#52/同題遙か「尽」】
「尽くすってどういうことなんでしょう?」
 彼女が眉根を寄せてぽつりと呟いたのは、昼間見た痴話喧嘩で女がそんなことを叫んでいたせいだ。
「そうだなぁ、大事な相手のためなら何でもするってことだろうが…」
「あ、それなら解る気がします」
 鮮やかな笑みに思わず瞠目した。

【#53/同題遙か「病」】
「ああ、ゆきちゃんの白魚のような手に痕を残すとは、なんと恨めしい…」
 草の葉で擦れて微かに血の滲んだ彼女の手を見ながら情報屋が嘆く。
「あーあ、福地の病気がまた始まった」
 けれど、彼女を傷つけたと思しき葉をこっそり毟り捨てた自分は、もっと酷い病気かもしれない。

【#54/同題遙か「封」】
 通り過ぎる彼女を引き寄せて腕の中に封じ込めた。
「な、たまにはのんびりしようや、お嬢」
「もう……放してください、龍馬さん」
 彼女もろともごろんと転がろうとしたその時、ピーピーと笛のような音。
「あ、お洗濯終わった。 早く干さなきゃ皺になっちゃう」
 今日も洗濯機に敗北。

【#55/同題遙か「おいで」】
 龍馬には珍しく難しい顔で考え込んでいた。
 すっと腕を前に出し、
「──おいで、お嬢」
 チチチ、と鳥のさえずり。
「…だーーーっ、帯刀みたいにさらっとは言えんて!」
 勢いよく頭を掻き毟った。

「なんだ、あれ?」
「顔、赤いね。 体調悪いのかな?」
「悪いのは頭だろ」

【#56/同題遙か「簪」】
 店先に並ぶ簪の前。
 彼女が手に取った一本は、髪に挿せば揺れる花がさぞかし似合うだろう。
「買ってやろうか?」
 簪を戻した彼女は「そんなに髪が長くありませんから」と笑う。
「だったら伸ばせばいいさ。 挿せるようになったら見せてくれよ」
 先の約束ができるなら安いものだ。

【#57】
「お嬢!」
 町へ誘おうと、障子をスパーンと開け放つ。
「あ」
「ぬわっ!」
 目に入った光景に慌てて背を向けた。
「すすすすまんっ!  着替え中とは知らなくてだな!」
 勝手に開けるなと、あれほど瞬に口うるさく注意されていたというのに!
 申し訳なさに今見た光景を消し去ろうと頭を振った。
 しかし目を閉じれば彼女のすらりとした足が脳裏に浮かぶ。
「本当にすまんかった!」
「あの、大丈夫ですよ。 靴下はいていただけですから」
 それでも普段隠れている部分の肌を見てしまったことに変わりはなく。
 それからしばらくの間、彼女の顔をまともに見ることができなくなってしまった。

【#58/同題遙か「目眩」】
 買い物から戻った彼女が大事そうに抱えてきた紙包み。
 やけに機嫌よくそっと開くと小さな鉢植えが出てきた。
「へぇ、鈴蘭か」
「はい、どうしても欲しくなってしまって」
 お水あげなきゃ、と部屋を出ていく彼女からは調合された鈴蘭の香り。
 ああ、嬉しくて目眩がする。

【#59/同題遙か「男前」】
「色男の兄さん、見てっておくれよ!」
 ずらりと並ぶ出店の列に溢れる客寄せの常套句。
「そこの男前さん、ひとつどうだい?」
 ふいにくいっと袖を引かれて、
「龍馬さん、呼ばれてますよ」
「俺か?」
「はい、そこの男前さん、って」
 嬉しくなって、人目も憚らず抱き締めた。

【#60/同題遙か「飴と鞭」(龍馬&桜智)】
「ありゃあないだろ。 なぁ、夢の屋」
「?」
「瞬のお嬢への態度だ。 厳しいことを言うくせに、俺らには見せん顔で笑ってみせる。
まさに『飴と鞭』だ。 女には飴だけでいいと俺は思うんだがな」
「ああ……ゆきちゃんは砂糖菓子のように甘く…」
「……お前に聞いた俺が悪かった」

【2012/06/13 up】