■小ネタツイートLog【その5】 龍馬

 現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
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 ※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)

【#41/同題遙か「添」】
 夜の町を並んで歩いているだけなのに心が躍った。
 夢の屋をおびき出すという目的すら忘れてしまうほどに。
 聞こえてきた無粋な合図の音に肩を落とす。
「──お嬢はここで待っていてくれ」
 体調の悪さか夜道の不安か、いつしか腕に添えられていた手が離れていくのが名残惜しい。

【#42/同題遙か「添」】
 そっと包み込むように彼女の頬に両手を添える。
 なんとなく、柔らかな頬をむにゅっと押しつぶしてみた。
「もう、何するんですかぁ」
「ハハッ、すまんすまん。 これで許してくれよ、お嬢」
 拗ねたように少し突き出した可愛らしい唇を軽くついばんだ。

【#43/同題遙か「胸」】
 空を見上げれば、そこに消えていく彼女の姿が今でも見える気がした。
 あれから十年。 もしやあれはすべて夢ではなかったのか。
 胸元に手を当てれば、小さな硬い感触。 間違いなく彼女が存在した証。
「お嬢…」
 その時聞こえた悲鳴に、出そうになった溜息を飲み込んで駆け出した。

【#44/同題遙か「結」】
 どうすればいいのだろう。
 彼との縁が切れてしまったようで、不安で堪らない。
 怨霊退治の帰り道、若い女性の会話が耳に入った。
「あそこの神社、縁結びで有名なのよ」
 こんなときに神頼みなんて、笑われるかもしれない。
 けれど、今はそれに縋るしか思いつかなかった。

 一緒に行きたい、と誘われたのは江戸でも有名な縁結びの神社。
「すまん、そこは勘弁してくれ」
 今にも泣き出しそうな顔。
「いやいやいや、誤解せんでくれよ。 縁結びの神様ってのは、男女で参るとやきもち焼いて縁を切っちまうっていうからな」
 彼女がなぜか嬉しそうに笑った。

【#45/同題遙か「かえる」】
 雨上がりの道に見事なアジサイがあった。
 不意に袖を引かれ── 『綺麗ですね』『そうだな』と肩に手を── ところが見れば目に涙を浮かべた青い顔。
「どうしたお嬢!?」
「か…」
「か?」
 震える指の先、葉の上に小さな蛙。
「よし、俺に任せな」
 彼女を抱えて駆け抜けた。

【#46/同題遙か「独占」】
「なあお嬢」
 仲間たちに囲まれている彼女を見ると、つい呼んでしまう。
 用事がある訳ではないから「どうしたんですか?」と問い返されても答えに困る。
「あー…今日もいい天気だな!」
「そうですね」
 返る笑顔に満足した。
 今はそんなことをしなくても、腕の中に独り占め。

【#47/同題遙か「濡」】
 稽古を終えて道場の裏の井戸で頭から水を被り、ぶるると頭を振って滴を飛ばす。
「どうぞ」
 差し出された手拭い。
「……やあ、お嬢!」
「あ……」
「どうかしたか?」
「髪……濡れると雰囲気が違って」
「水も滴るいい男だろ?」
 はい、と素直に微笑まれて、嬉しいやらこそばゆいやら。

【#48/同題遙か「叫ぶ」】
 傍にある温もりを引き寄せ、ぎゅっと抱き締めた。
「お嬢ー…」
「──龍馬さん」
「んー?」
「龍馬さんっ!」
「どーしたお嬢、慎太郎みたいな顔になってるぞー?」
「みたいな、じゃない!  寝ぼけるのもいい加減にしてくれ!」
 盟友の叫びが痛む頭に突き刺さる宴会明けの朝。

【#49/同題遙か「飾」】
 逗留している二人が戻ってきた。
「おや、呉服屋は?」
「それが、いらん、て言い出してな。 男としちゃ精一杯着飾ってやりたいんだが」
「でも私、龍馬さんと一緒にいられるだけで…」
「お嬢…」
 この可愛らしい若夫婦のために、花嫁衣装を貸してくれる人を探してやろうと思った。

【#50/同題遙か「膨」】
「うーん、船も捨てがたいが、やっぱり『ひこうき』だな!」
「だったら、『豪華客船で世界一周の旅』とかどうですか?  船に寝泊まりしながら、世界中のいろんな港に寄るんです」
「そりゃあいいな!  ああ、いつか絶対行こうぜ、お嬢!」
楽しい夢は膨らむばかり。

【2012/06/12 up】