■小ネタツイートLog【その4】
現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
新ネタは上記アカウントにてご覧ください。
※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)
【#31】
「あれ…?
こんなところに集まって何をしてるんですか?」
「今夜は月が綺麗だからね」
「月見酒ってとこだ。お嬢も仲間に入るかい?」
「でも…」
「…蓮水には酒はまだ早いだろう」
「まあそう言うなって、晋作。
何事も経験だ。
な、お嬢?」
「……それじゃ、ちょっとだけ」
/
「──おや?
ゆきくんが船を漕いでいるようだよ」
「なっ!?」
「だから言っただろう」
「い、いや、だがお嬢が飲んだのは最初の一杯だけだぜ」
「飲んだことのない者なら、盃一杯でも酔うには十分だったんじゃない?
ほら、ゆきくん、そろそろ部屋に戻りなさい」
「………」
「蓮水」
「………」
「いやぁ、悪かったな、お嬢」
「……ふぁい」
「「「?」」」
「ゆきくん?」
「………」
「蓮水?」
「………」
「お、お嬢?」
「ふぁい」
「……どうやら彼女には龍馬の声しか聞こえないらしいね」
「龍馬、飲ませた責任を取って、蓮水を部屋へ運んでやれ」
「お、おう」
【#32】
「お嬢……」
「龍馬さん、じっとしててください」
「そう言われてもだな……」
「だめ、動かないで」
「うぅ……頼むから、そんなに見つめんでくれ」
「でも、しっかり見ないと……」
「…………だあーっ!
もう我慢できーんっ!」
そう一言叫ぶと、龍馬は崩れるように床に座り込んだ。
「あーもう坂本!
ポーズとっててくれないと描けないだろ!」
絵の心得があるというチナミに触発されて、皆で絵を描いてみようということになり、満場一致でモデルに決まったのが龍馬だったのである。
「勘弁してくれよ、都〜。
もう腕がパンパンだぜ〜」
ぼやきながら二の腕を揉みほぐす。
「龍馬さん、あと少しなんです、お願いします」
彼女に拝まれてしまっては断ることもできず。
龍馬はやれやれ、と立ち上がると、左手を腰に当て、右手でビシッと空を指差すポーズをしぶしぶ取るのだった。
【#33】
潤んだ目で見つめてくるから、誘われるように抱き寄せて口付けて。
「…あの、龍馬さん?」
「ん?」
「何してるんですか?」
龍馬の手は彼女のブラウスのボタンをせっせと外している。
「こういうことだろ?」
「違います!
……もう、今日は私からキスしてみようと思っただけなのに」
「同じことだぜ、お嬢」
【#34】
「──あら、坂本さん…?」
「げっ!
あ、あんたは…」
「へぇ…その子が──」
「だあぁぁぁっ!
その先は言ってくれるな!
すまんお嬢、先に行っててくれ。
すぐに追いつくから」
「……わかりました」
/
「──あれ?坂本は?」
「うん……先に行っててくれって」
「ふーん」
「……綺麗な人、だったな…」
「ん?」
「あ……ううん、なんでもない」
無理に作った笑みの中に、初めて見る不機嫌とも悲しげとも取れる複雑な色があった。
私の天使にこんな顔をさせるなんて、坂本のヤツ、後でシメてやる!
【#35】
さくり。砂を踏む音。
「どうしてもここに来ちまうんだよなぁ」
「ふふっ、私たちの大切な場所ですから」
ここはいつか小指を絡めて未来の幸せを約束した浜辺。
ざざっと寄せる波が足元を洗っていく。
「おっと」
龍馬は慌ててゆきの身体を抱き上げた。
「冷やしちゃまずいだろ?」
「足くらいなら平気です。
それに……重いですよ?」
「そりゃあ重いに決まってるさ。
なんせ二人分なんだからな」
「あ…」
頬を染めてはにかむところは、以前からちっとも変わってなくて。
幸せの重さを感じながら、穏やかな波音に包まれる。間近で見つめ合ううち、どちらからともなく唇を寄せた。
【#36/同題遙か「ずるい」】
「龍馬さん」
大きな瞳でどこまでもまっすぐに見つめてくる。
もしかして?
十年前の記憶が重なって、期待は増す一方。
「ゆき、行きますよ」
「あ、瞬兄、待って」
あっさり踵を返した後ろ姿を目にした時の落胆は大きい。
「……そりゃあずるいってもんだぜ、お嬢」
【#37】
「うん、いい匂いだ」
贈った鏡台に忍ばせた香水に彼女が気付いて以来、望めばこうして首筋に顔を埋めることを許される。
優しい心根ゆえか、彼女自身もこうされることを望んでいるからなのか、それともまだギリギリ手前で触れずにいる油断ゆえか。
「もう空になるんじゃないか?」
「あ……でも、もう十分楽しませてもらいました」
「んな淋しいことを言ってくれるなよ」
香水がなくなれば、俺がこうして香りを楽しむことができなくなるじゃないか。
そろそろもう少し先に進んでもいいかい?
「明日、一緒に店に行ってみようぜ。
今度はお嬢が好きなのを選べばいいさ」
きっと彼女は遠慮する。
否の言葉を言わせないために、白い首筋に想いを刻み込むように吸いついた。
「明日、な?
約束だぜ」
たった今つけた痕が紛れてしまうほど赤くなった彼女が小さく頷いた。
【#38/同題遙か「阻止」】
「おーいお嬢!」
駆け出した直後、
「っのわっ!?」
石に躓いて派手にすっ転ぶ。
「龍馬さん!?
ごめん、みんなは行って」
「了解。
団子は買ってきてやるから」
せっかくの楽しみを阻んでしまった申し訳なさよりも、思いがけず二人きりになれたのがこんなに嬉しいなんて。
【#39】
近づく気配に目が覚めた。
「あ、ごめんなさい」
木に背中を預けて空を見ているうち眠っていたらしい。
「おー、お嬢ー」
「ふふっ、龍馬さんがとっても気持ちよさそうで」
「お嬢も一緒にどうだー、なんなら肩貸すぜー」
寝ぼけたまま答える。
ぽてっと肩に重みが加わって、再びまどろみの中へ引き戻された。
【#40/同題遙か「役得」+つづき】
「お嬢!」
飛びかかるように抱きついて、身体を捻って背中から着地する。
蹴飛ばしてやった怨霊に、仲間がとどめを刺した。
「ゆき、浄化を!」
「わかった!」
胸の上にあった重みが消え去って。
「…戦闘中じゃなきゃなぁ…」
背中の痛みと引き換えの、ささやかな役得。
/
「…龍馬、銃を投げ捨てるな」
「すまんすまん、お嬢の後ろに怨霊が迫ってたもんでな」
「…暴発したらどうする?」
「だから悪かったって。
以後気をつける、うん」
とはいえ身体が勝手に動いたのだから仕方ない。
「瞬兄、龍馬さんを責めないで。
龍馬さん、助けてくれてありがとう」
その言葉だけで十分だ。
【2012/05/04 up】