■1月31日は……【アシュヴィン編】
【はじめに】
えー、1月31日は『愛妻の日』だそうです。
1=I(アルファベットのアイ)、3=さ、1=い、で『あいさい』。
壮大なこじつけのような気がしないでもありませんが……
いつも買い物してるスーパー内のお花屋さんでそんなポップを見つけました。
というわけで、4カップルの『愛妻の日』をお楽しみください(笑)
【常世の国の皇夫妻の場合】
「── 明日は1月31日かぁ……」
「その日に何かあるのか?」
ぽつりと呟かれた声に、アシュヴィンは読んでいた竹簡から目を上げて問い返した。
すると呟きの主、千尋がくすりと笑う。
「前に私がいた異世界ではね、日付の語呂合わせで『○○の日』っていうのがたくさんあったの」
「ほぅ……だったら1月31日は何の日なんだ?」
「えーと、確か……『愛妻の日』、だったかな?」
千尋が答えると、アシュヴィンはふぅん、とだけ言って読みかけの竹簡へと戻っていく。
『愛妻の日』だからといって別に何を要求するわけでもなく口にした千尋ではあったが、夫のその態度にはカチンときた。
夫の座る椅子のそばにつかつかと歩み寄り、彼の前にある机をだんっと叩く。
「ちょっとアシュヴィン!
『愛妻』の意味、わかってる?」
「ああ、わかってるさ。
『愛する妻』、だろう?」
「わかってるんだったら、もうちょっと反応してよ!」
「何を期待しているのかは知らんが──」
アシュヴィンはバサリと竹簡を置き、おもむろに立ち上がった。
妙なことで突っかかったせいで怒らせてしまったかも、と焦る千尋の腰をすっと引き寄せ、触れる寸前まで顔を近づける。
「── どうして明日に限定せねばならん?」
「え……?」
「俺がお前を愛していない日があると思っているのか?」
「そ、それって……」
「俺にとっては毎日が『愛妻の日』なんだぜ?」
アシュヴィンの囁きが艶と甘さを濃くしていくにつれ、千尋の顔も赤く染まっていく。
「…………なんか悔しい」
「『嬉しい』の間違いだろう?」
ニヤリと勝ち誇ったような笑みを浮かべたアシュヴィンは真っ赤になって拗ねる妻に、これ以上ない愛を込めた口付けを贈った。
* * * * *
「── ところで、一番大事なことを忘れてないか?」
「え?」
「明日は何日だと言った?」
「明日?
明日は1月31日──
あっ!
アシュヴィンの誕生日!」
「はぁ……やっと思い出したか。
薄情な奥方殿だな」
「ごめんなさいごめんなさいっ!
ほんとにごめんなさいっ!
何か欲しいものある !?
何でも言って!
できる限り用意するから!」
「ふっ、そう慌てるな。
何も用意する必要なんてないさ。
俺が世界で一番欲しいものは──
ここにあるんだから」
「ひゃぅっ !?」
〜おしまい〜
【プチあとがき】
はい、アシュヴィン編です。
今回の4本の中では一番短くて一番甘いです、なぜか(笑)
常世の国の暦に『1月31日』があるかどうかが大問題(笑)
※つけたしつけたし!
1月31日がアシュヴィン様のお誕生日であることをすっかり失念しておりました。
急遽加筆してみた。
前日の話なんだから、昨日までに気づけばよかったんですが(汗)
あえて台詞のみにしたので、ご自由に妄想してくださいませ(笑)
【2011/01/22 up/2011/01/31 加筆】