■ふぉ〜りんらぶ番外編 【10:なまえ・その2】
※本編終了後のお話です
この数日、常世の国の皇・アシュヴィンはずっと何か考え込んでいる。
そんな夫の様子が心配になった千尋は思い切って訊ねてみた。
「アシュヴィン……何か心配事でもあるの?」
「いや………」
「何もない、って顔じゃないわ。話して? ね?」
手の甲を口元に当て、足を組んで椅子に座っている夫の傍へ行き、そっと頭を撫でる。
するとアシュヴィンは随分大きくなった千尋の腹にふわりと抱きついた。
「── 名前」
「名前?」
ぺたりとくっつけていた頬の辺り、中からポコンと蹴られてその衝撃に慌てて顔を離し。
「── こうして元気に育っているんだ、呼びかけるのに名前が必要だろう?」
ククッと笑って再び千尋の腹に頬を寄せる。
「そ……そうね…」
思わず千尋は想像してしまっていた。
『○○ちゃ〜ん、俺がパパでちゅよ〜♥』とデレデレ頬を緩ませる彼の姿を。
ぶるぶるっと身体を震わせて、思い出したように彼の頭を撫でた。
「で、でも生まれるまでまだ二月はあるし、性別もわからないんだから、ゆっくり考えればいいんじゃない?」
「だがなぁ……」
アシュヴィンは至極不服そうである。
「じゃあ、男の子でも女の子でも大丈夫な名前は?」
「うーん、今すぐには浮かばんな」
「だったら、誰かに名付け親になってもらうとか?」
「それはできん! 親は俺だ! 他の奴に任せられん!」
「そ、それはそうね……じゃあ、アシュヴィンが一番好きな名前をつければいいわ」
すると彼は腹から頬を離し、千尋の顔を見上げてきた。
ふっ、と意味深な笑みを浮かべ、
「── 我が子に『千尋』とはつけられんだろう?」
ぼふん、と一気に赤くなった彼女を見てくつくつと笑い、再び彼女の大きな腹を抱き締めて頬を摺り寄せるのだった。
〜おしまい〜
【プチあとがき】
既に親馬鹿なアシュヴィン(笑)
でもやっぱり千尋がイチバン♪
【2008/12/13 up/2008/12/19 拍手より移動】