■1月31日は……【知盛編】 知盛

【はじめに】
 えー、1月31日は『愛妻の日』だそうです。
 1=I(アルファベットのアイ)、3=さ、1=い、で『あいさい』。
 壮大なこじつけのような気がしないでもありませんが……
 いつも買い物してるスーパー内のお花屋さんでそんなポップを見つけました。
 というわけで、追加カップリングの『愛妻の日』をお楽しみください(笑)

【戦オタクと獣神子ご夫妻の場合】

 がちゃ、と鍵を開ける音に続いて玄関の扉が開く音が聞こえてきた。
 鍵を開けて入ってくる人間なんて、自分を除けば他には一人しかいない。
 以前置かれていた境遇のせいか、微かな足音すら立てずに近づいてくる気配に、キッチンに立っていた望美は振り返った。
「おかえ── っんっ !?」
 たった4文字の言葉すら最後まで言わせてもらえなかった。
 振り向いた時にはすでに真後ろにまで迫っていた夫により後頭部をがしっと掴まれたかと思えば、強引にぐいっと引き寄せられて。 抵抗の意思を見せる間もなく、やけに楽しそうな笑みに歪む唇によって口を塞がれていたのである。
 無理な体勢からなんとか腕を伸ばし、夫の額辺りを掴むことに成功した望美は思い切り腕に力を込めて呼吸を確保する。
「── はっ……な……ど、どういうつもりっ !?」
 帰宅早々、不意打ちで激しくも濃厚な口付けをぶちかましてきた不届き者をキッと睨みつけた。 だが赤く染まった顔で息を乱しながら文句を言っても効果はなかったらしい。 不届き者はますます楽しげに笑みを深めるばかり。
「クッ……まるで手負いの獣だな……」
「誰のせいよっ!」
 思わず振り上げた望美の拳を、知盛はやすやすと受け止める。
「……今日は……『妻を愛でる日』だそうだ」
「へ?」
「……社内の妻帯者どもが『今日は愛妻の日だ』と浮き足立っていたが……」
「ちょっ、それ、意味が違うってば!  『妻を愛でる』んじゃなくて、『愛する奥さんを労おう』みたいな意味でしょ!」
「……神子殿は俺に愛でられるのはお気に召さなかったか……」
「そ、そういうわけじゃ……」
 いつも不敵な笑みを浮かべて自信たっぷりな夫が少し寂しげに眉を曇らせたものだから、望美は否定する他ない。 そもそも好きで夫婦となった相手である。 愛でられることに異存はない。
 が。
 寂しげだった夫の顔が、してやったりな笑みに早変わりした。
 策にはまったと気づいた時にはもう遅い。
 再び息もできないほどの深い口付けをお見舞いされた望美。 しばらく経ってようやく解放された時にはへなへなと床に座り込んでしまっていた。
「── もうっ、帰ったらすぐ手を洗ってうがいしてっていつも言ってるでしょ!  風邪ひいたらどうするのよっ!」
 悔し紛れに怒鳴り散らせば、夫はふむと頷いていそいそと洗面所へ。
 やけに素直に従ったということは、洗面所から戻ってきたら── 望美は考えただけで熱の上がってしまった頬を押さえ、座り込んだ拍子に脱げてしまったスリッパを夫が向かった方向へ力いっぱい投げつけた。

〜おしまい〜

【プチあとがき】
 はい、愛妻の日チモ編です。
 現代お持ち帰りのゲームメーカーにお勤めの知盛さんでございます。
 短編「真実」未読の方は、ぜひご一読を。
 ふふふ、書いててなんか身体がムズムズしたよ(笑)
 まあ彼の存在は公式でエロ担当ですから(笑)
 れっつ深読み!(笑)
 4年半ぶりのチモ創作でした。

【2011/01/23 up】