■風の中の花 【おまけ】
知盛が岬を降りた後、涙を拭った私は気持ちを落ち着けるため、大きく深呼吸した。
顔を触ってみても、もう涙で湿った感触はない。
手鏡なんて持ってないから、どんな顔してるかわからないのが不安だけど。
けど、大泣きしたら、ちょっとすっきりしたかも。
それに知盛とキ─── きゃあぁぁぁっ、私、大変なことしちゃった!?
ボボボッと火がついたように、顔が赤くなるのがわかる。
だめだだめだ、こんなんじゃ二人に顔合わせられないよ〜。
私は、パンパンッと自分の頬を叩き、表情を整えた。
「ごめーん、お待たせ〜」
「おう、望美。遅かったな─── あれ? 顔、どうした? 赤いぞ?」
まずいっ、まだ赤かったか!?
うわぁ、将臣くんの顔、まともに見れないよぉ。
「日焼け… しちゃったかも」
「はははっ、さすがに日焼け止めクリームなんて持ってねぇもんな」
疑いもなく、将臣くんは笑っている。
はぁ…、なんとか切り抜けた?
「ほら、食うか?」
将臣くんが差し出したのは、おいしそうに熟したスモモ。
ちらりと知盛の方を見れば、おいしそうでもまずそうでもなく頬張っている。
「あ… ありがと…… あ、冷えてない」
受け取ったスモモは、もぎたて新鮮なんだろうけど、程よい人肌……
「文句言うな、残しておいただけありがたいと思え」
「うぅ、いただきます…」
せっかくなら冷たく冷やしたスモモ食べたかったな…
でも、一口かじると、とろけるような甘さと酸っぱさがマッチしてて──、
「おいしいっ!」
こっちの世界では、甘いものを口にする機会があんまりなかったから、本当においしいと思えた。
とろけるように甘い───
岬での出来事を思い出し、再び私の頬が染まる。
「お、おい、本当に大丈夫か?」
「ななな、なんでもないよ、ほんとに!」
不思議そうな顔で私を見ている将臣くんから、知盛に視線を移す。
知盛はすでにスモモを食べ終わって、残った種をポイッと放り投げた。
そして、私を一瞥した後、ペロリと唇を舐めると──
「…ご馳走様」
こっちを見てニヤリと笑う知盛。
うわぁ、絶対わざとだよっ!
私の顔は真っ赤だ、きっと。
もう、ここから消えていなくなりたいと心底願ったのだった…。
〜おしまい〜
【プチあとがき】
スモモ万歳っ!
やっぱり望美ちゃんは普通の女の子、かもしれない。
ということで、ニセチモリのお口直しにどぞ(笑)
【2005/10/11 up】