■至福の刻
「── 私、こんな日が来るのを、ずっと夢見てた……」
「の、望美……」
恥ずかしそうにもじもじしている望美の姿に、九郎の頬も赤く染まる。
「あの… 私、初めてだから…… 優しく… してね?」
「俺もだ… その… 努力する」
正座した膝の上で拳を握り締め、生真面目な答えを返す九郎に、望美ははにかんだ笑顔を返した。
そして、望美は単の合わせを気にしつつ、九郎の前にその身を横たえた。
望美は自分の中でうごめく異物感に恍惚としていた。
その時。
「痛っ!」
「す、すまんっ。少し奥まで入れすぎたか…」
「大丈夫だよ… でも、もう少し、ゆっくりがいい……」
「わ、わかった」
望美は再び目を閉じると、九郎に身を委ねた。
九郎はふぅと息をつくと、その額にびっしりと浮かんだ汗を、手の甲で拭った。
「んっ… 九郎さん…… 気持ちいい……」
「そうか… お前が喜ぶなら、いつでもしてやるさ」
うっとりした顔の望美に、九郎にも笑顔が浮かぶ。
「ありがとう、もういいよ。今度は私がしてあげる」
「い、いや、俺はいい」
がばっと身を起こした望美は、さっと正座すると、ぽんぽんと自分の膝を叩く。
「ほーら、遠慮しないで。こう見えても得意なんだから── 耳そうじ」
そう言うと、望美は九郎の手から耳掻きを奪い取った。
〜おしまい〜
【プチあとがき】
ありがちネタでごめんなさい(汗)
別に九郎さんじゃなくてもよかった気も(笑)
【2006/01/06再掲】