■小ネタツイートLog【その3】 将臣

 Twitter(@yuna_fantasia)小ネタツイートまとめ。
 ※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)

【#21/同題遙か「悪戯」】
「望美って有川くんと付き合ってるの?」
「ううん」
 その否定っぷりに頭をもたげる悪戯心。背後からばふっと抱き付いてやった。
 きゃーっと黄色い声が上がる。
「俺が何だって?」
「何でもないよ」
 悪戯し甲斐のないヤツ。
「お?」
 長い髪の隙間からちらりと見えた耳が赤かった。

【#22/同題遙か「つねる」】
 遅れて店を出たら、彼は二人の女の子と楽しそうにしゃべっていた。
 ムッとして、つかつかと近づき、思い切り脇腹をつねってやる。
「いてっ!?」
 女の子たちはぷっと吹き出し、ありがとう、と去っていった。
「妬くなよ。 観光客に道聞かれただけだぜ」
 妙に嬉しそうな顔が余計ムカつく。

【#23/同題遙か「守」】
「はい、これ」
 差し出されたのはお守り袋。
「ほら、そろそろ将臣くんの誕生日でしょ?」
 これくらいしか思いつかなくて、と笑う彼女の表情の奥に一抹の寂しさが読み取れた。
 本宮での用が済めば、また道は分かたれる。
「おう、サンキュ」
 仕舞い込んだ胸元が仄かに温かくなった。

【#24/将望・同題遙か「甘い」】
 南の島に自生する完熟の果物はとろけるように甘い。
「うん、お菓子は甘さ控えめのほうがいいけど、果物はやっぱりこの甘さよね!」
「ったく、せっかく二人きりなのに、雰囲気まで甘さ控えめかよ」
「ん?」
 リスみたいな頬で口をもぐもぐさせる彼女を見れば笑うしかなかった。

【#25/同題遙か「月見」】
 浜辺から見上げる満月は魅入られそうなほどに美しかった。
 隣を見れば月明かりに浮かぶ陶然とした横顔。
「── 『饅頭みたいでうまそう』」
「!」
「って顔に書いてあるぞ」
「っ!?」
 慌てて頬を覆う姿に苦笑しながら、美しい満月は何らかの欲を掻き立てるのだと妙に納得した。

【#26/同題遙か「叩く」】
 手元の紙片の束を見て溜息を吐く。
「言仁くんも六代くんも一生懸命作ったんだよ」
 紙片に書かれた幼い文字は『かたたたき券』。
 間違いなく望美の入れ知恵だ。
「一気に老けこんだ気分だな」
「いいじゃない、一足早く父親気分になれて」
 複雑な思いで彼女の膨らんだ腹を撫でた。

【#27/同題遙か「一撃」】
 最近聞かれるようになった『源氏の神子』の噂。
 いつか戦場で逢うことになる。
「── 女に剣を向けるのは気が引けるが、そうも言ってられねぇ。 その時は一撃で終わらせるさ」
 そして── 剣を構えるその姿に一撃を食らったのは己の方だった。
「お前が……源氏の神子……なのか…?」

【#28/同題遙か「紅葉」】
 試験前、先輩と図書館で勉強してくる、と言っていた兄が早々に帰ってきた。
「早かっ── 兄さん!?」
 兄の頬には紅葉のような手形がくっきりと付いている。
「これか?  『そんなことしてる場合じゃないでしょ!』 バッチーン、ってな」
 兄のニヤケ顔を殴りたい衝動を必死に飲み込んだ。

【#29/同題遙か「鍵」】
 その日に向けていろいろな準備をしていく。
 今、手の中にあるのもそのひとつ。
「うわぁ…」
「何変な声出してんだよ」
「なんか緊張しない?」
「そうか?」
 同じ形のふたつの鍵は、ただのお揃いとは意味が違うのだ。
「だって私と将臣くんが『ただいま』って帰る家の鍵なんだよ?」

【#30/同題遙か「怪」】(※「#29「鍵」つづき)
鍵を握りしめ、意味ありげに笑う将臣。
「今、何か変なこと考えた?」
「全然」
「うわ怪しい!  絶対変なこと考えてる!」
「…お前、あれやるのか?」
「あれって?」
「『ご飯にする?お風呂にする?それとも私?』ってヤツ」
「や、やらないよ!」
 ちょっと考えてたなんて口が裂けても言えない。

【2013/01/28 分割再up】