■小ネタツイートLog【その1】 将臣

 現在ツイッター(@yuna_fantasia)にて小ネタツイート垂れ流し中。
 1日1ネタが目標ですが、ネタが降ってこなければおやすみ。 そんな自由な感じで。
 そのログ的にちょこっとずつまとめていきます。
 新ネタは上記アカウントにてご覧ください。
 ※「同題遙か」記載のあるものはTwitterでの企画参加作です。(ハッシュタグ:#同題遙か)

【#01】
 退屈な日常だった教室がこんなにも愛おしくて。
 そこにいるのが当たり前だった人がかけがえのない存在だったと気付いて。
 茜色に染まるこの場所でなら許される気がして、陣羽織の胸元をぐっと掴んで限界まで爪先立ち。
 少し戸惑う顔に、今は言えない言葉を込めた唇を近づけた。

【#02/同題遙か「ずるい」】
「暑い日はアイスだよね♪」
 望美はにんまりと笑う。
「だな」
 同意しながら将臣はアイスを持つ彼女の手を掴んで引き寄せた。 大きな一口で齧り取る。
「ちょっと!  将臣くんズルい!  そっちも一口ちょうだい!」
 苦笑しながら、大きく開けて待つ彼女の口へアイスを差し出した。

【#03/同題遙か「阻止」】
 細波の音をBGMに、木陰の下で彼女の頬に手を添える。唇が触れるまであと少し──
「まさおみどのー!  のぞみどのー!」
 甲高い子供の声。
「……六代のヤツ、もう昼寝終了かよ」
「ほら、行こう?」
 苦笑する望美と共に声のする方へ。甘い時間はめっきり減ってしまった。

【#04/同題遙か「添」】
 久しぶりに会う仲間たちの祝福の言葉に、花嫁が幸せそうな笑顔で応えている。
「ったく、俺はスルーか?」
「しょうがないだろ、花婿は“メインディッシュのパセリ”なんだから」
「…添え物かよ」
 それも当然か、と今日から妻になる幼馴染の美しい晴れ姿に口元を緩ませた。

【#05/同題遙か「胸」】
 今日の体育は水泳。
 プールサイドに集まってくる生徒の中に、ひと際目を引く水着姿があった。
「お前、結構胸あったのな」
「…将臣くんのバカっ!」
 ベチンと叩かれた背中がヒリヒリする。
 気付きたくなかった、性別の違いに。
 胸の中で『何を今更』ともう一人の自分が嗤った。

【#06/同題遙か「独占」】
 それは世の中で一番簡単なことかもしれない。
 食べ物を手に「おっ、うまそうだな」とあいつの前を横切るだけ。
「あっ、それなに将臣くん!  私もいる!」
 尻尾を振る子犬みたいに飛びついてきたら、後はいろいろ揶揄ってやっていれば、他の奴らは決して近寄ってはこないから。

【#07/同題遙か「叫ぶ」】
 ひと潜りして砂浜に転がって。
 ぼんやり眺めていた空が徐々にオレンジ色に染まり始めた頃、
「──まーさーおーみーくーん!」
 ……人の名前だと思って、んなデカイ声で叫ぶなって。
「……おう」
「あ、将臣くんこんなとこにいた!」
 『向こう』では呼ばれない名前がこんなに沁みる。

【#08/同題遙か「膨」】
 ぷくっと頬を膨らませ、そっぽを向いた望美を背後から抱き締める。
「んじゃ、二択な。 ここからバックドロップ決められるのと、機嫌直してこのまま抱き締められてんの、どっちにする?」
「……二択になってないし」
「んじゃ機嫌直せよ」
 膨らんだ頬を指でぷしゅっと潰した。

【#09】
「望美」
「なーに?」
 ファッション雑誌から顔を上げると、目の前に顔があった。
「…何?」
「そういう雑誌って何が面白いんだ?」
「可愛い服がいっぱい載ってるし、モデルさん可愛いし」
「へぇ」
「で、何?」
「別に」
 離れていく将臣に首を傾げつつ、
「……なんか近かったな」
 少しドキリとした。

【#10/同題遙か「離」】
 しっかりと握り締めた手。
「お願い、離して」
「離さねえっつっただろ」
 辛そうに顔を歪めた彼女は力任せに手を振り解き、家を飛び出した。
 今頃浜は久々に寄港した熊野の船で市のような賑わいだろう。
「ったく」
 将臣は作りかけの煮物の鍋を火から下ろし、彼女を追って古い仲間に会いに浜へ向かった。

【2013/01/28 分割再up】