■秘密基地
「── わーっすごいっ! 絶景だね!」
「だろ? 俺の『秘密基地』ってとこだ」
「ぷっ、基地っていってもなんにもないじゃない」
「まあな。けど秘密ってのは嘘じゃないぜ」
「そうなの?」
「ああ、譲にも教えてねえ」
「じゃあ私を連れてきちゃダメじゃない。せっかくの秘密なのに」
「バカ、お前だから連れてきたんだよ」
「えへへ……じゃあ今日からここは将臣くんと私の『秘密基地』だね」
「そういうこと。そうだ、そこらに寝転がってみろよ。気持ちいいぜ」
「うん── ほんとだ、草がいい感じにクッションになって、背中も痛くないね」
「よっと……ここに転がって空を眺めてるとさ、背中に地面を感じてるはずなのに、空に浮かんでるような気になるんだよな」
「うん……わかる気がする。なんだかぐんぐん空に昇ってくエレベータの中に寝そべってる感じがしてきたよ」
「確かに。今見えてるの、全部青だもんな」
「あっ、ねえねえ、あそこ、なんだか龍が空に昇ろうとしてるみたいに見えない?」
「へぇ……」
「ん? どうかした?」
「いや……実は俺もそう思ってた。お前にもそう見えるんだな」
「たぶんあの真下あたりを龍脈が通ってるから、そのせいなのかも」
「おっ、さすが龍神の神子」
「元、だけどね。そっか……元の世界に帰る時は、ここに時空の狭間を開いてもらうといいかも」
「ここに……か?」
「うん、ここなら龍神の力も強いし、他の人たちに迷惑かけることもないし」
「……俺たちの『秘密基地』なのに、か?」
「あ、将臣くんがイジケた……」
「イジケてなんかねえだろ」
「ううん、イジケてるよ。将臣くんのケチー」
「ケチで悪かったな……欲張りにならなきゃ手に入れられないものがあるって身に染みてるんだよっ」
「い、痛い痛いっ、苦しいってば将臣くんっ! ………ま、将臣くん…?」
「── なぁ、望美」
「なあに?」
「元の世界に帰ったらさ──」
「うん」
「── 結婚、しようぜ」
「えー?」
「………………っ、お、おまっ、人の決死の告白をそんなあっさりと蹴るのかっ !?」
「だって……帰るまであと1年近くあるんだよ? ……そ、そんなに待てないっていうか、待ちたくないっていうか……」
「お、真っ赤になった」
「ま、将臣くんのせいでしょっ! って、どこ触って──」
「1年待てねえんだろ? んじゃ俺たちは今日から正式に夫婦ってことで」
「ま、待って待って待ってっ! さっきの取り消し!」
「いーや、取り消しなんてさせねえ。せっかく取り戻したんだ、二度と離してやらねぇからな」
〜おしまい〜
【プチあとがき】
最後にエロ臣降臨(笑)
意味わかんない、という方は将望長編『Little Girl』をお読みください。
【18】冒頭の場所にて、番外編「りとるがーる・あふたー」のちょっと未来の話です。
これに地の文章を入れて「あふたー」に加えると思います。
なんとなく思いついた展開を台詞だけで書いてみました。
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