■目隠し
それはクラスメイトの春日望美と駅前のパティスリーの新作ケーキの話題で盛り上がっていた時だった。
望美の脇からにょきっと2本の腕が生え、その手はあろうことかカポッと彼女の胸に被さったのである。
きゅ、と彼女の眉間に皺が寄る。
「── だーれだ?」
「将臣くん」
「……即答かよ。わー、とか、きゃー、とか叫ばねぇの?」
「叫んでほしい?」
「別にどっちでもいいぜ?」
「わー、きゃー。
はい、これでいいでしょ。
もうっ、どさくさに紛れて揉まないの」
望美は平然とした顔で、胸の上でわきわきと動く手をぺちんと叩く。
叩かれた有川くんは、へいへい、とおどけた返事をして、笑いながら去っていった。
「の……望美……? い、今の……」
「え? ああ、将臣くん? ほんとにもう、何やってんだろうねぇ」
あはは、と笑う望美は特に恥ずかしがっている様子もない。
本人たちは『ただの幼馴染』だと言うけれど、実はもっと深い関係なんじゃないの?
いや、クラスのほとんどが確信を持って彼らの仲は深いと思っている。
「将臣くんが背後に立ったら気をつけてね」
「え」
「油断してると触られちゃうかもよ? ああ見えて将臣くん、重度のおっぱいフェチだから」
井戸端会議のおばちゃんみたいに手をぱたぱたさせながら笑ってるけれど。
そのあっけらかんとした態度はもしかして、しょっちゅう今みたいに触られてるから?
── いやいやいや、たとえおっぱいフェチだとしても、彼がそうやって触るのはあなただけです、春日望美さん!
〜おしまい〜
【プチあとがき】
目隠しネタ・将臣編。
すでに『目隠し』ではない(笑)
将臣に新たな属性を付加してしまった(汗)
【2010/10/22 up/2010/11/15 ブログより移動】