■1月31日は……【東金編】 東金

【はじめに】
 えー、1月31日は『愛妻の日』だそうです。
 1=I(アルファベットのアイ)、3=さ、1=い、で『あいさい』。
 壮大なこじつけのような気がしないでもありませんが……
 いつも買い物してるスーパー内のお花屋さんでそんなポップを見つけました。
 というわけで、4カップルの『愛妻の日』をお楽しみください(笑)

【東金ご夫妻の場合】

 ピンポーン、とドアチャイムが鳴る。
 夫の帰りを告げる音色に、かなでは味噌汁を掻き混ぜていたおたまを置いて、ぱたぱたとスリッパの音も高らかに玄関へと向かった。
 鍵を開け、ドアを開いておかえりなさいと微笑むと、ただいま、と夫が入ってくる。 同時にふわりといい香りが漂った。
 何の香りかしら、とかなでが首を捻る間もなく、がさりと音を立てて目の前が赤く染まる。
「え……えっ?」
 目の前には真紅の薔薇の花。 ざっと見て50本はあるだろうか。 蠱惑的な甘い香りがたちまち玄関に充満した。
「あっ、あのっ、これは……?」
 一抱えもある大きな花束の向こうでかなでの夫・千秋がニヤリと楽しげに笑う。
「えと……今日は1月31日ですよね……えーと……」
 こんな大きな花束を持って帰ってくるなんて、今日は何か大切な記念日だったかしら?
 いくら考えても思い出せないかなでは、余りの申し訳なさに顔を蒼白に染めていく。
「あの、ごめんなさい……今日は何の日でしたっけ……?」
 かなでは白旗を掲げ、機嫌を損ねてしまうのを覚悟で正直に尋ねた。
 すると千秋は機嫌を損ねるどころか、可笑しそうに声を上げて笑ったのである。
「えっ、あっ、あのっ」
「心配するな、何の記念日でもねえよ」
「へっ?」
 くつくつと笑い続ける夫は、かなでの杞憂など全てお見通しだったらしい。
「── 今日は『愛妻の日』だそうだ。 だったら愛する妻に何か贈ろうと思ってな」
 ほら、と差し出す花束をかなでは一向に受け取ろうとしない。 感動のあまり身動きできない、というわけでもなく、胸元でぎゅっと手を握り締め、難しい顔で何か考えている。
「かなで?」
「あ、あのっ、逆の日はいつですか?」
「逆?」
「はい、今日が『愛妻の日』なら、『愛夫の日』はいつなんでしょう?  あれ……なんか言葉が変?  とにかく、愛する夫のための日って── ひゃっ !?」
 千秋は腕の中の花束を惜しげもなくバサリと床に放り投げ、可愛いことを言いながら頭を悩ませ始めた愛する妻を思い切り抱き締めたのだった。

〜おしまい〜

【プチあとがき】
 東金編。
 彼はこういうイベントごと、特にかなでちゃんが喜びそうなことは
 敏感に情報をキャッチしてくれてそうな気がします。
 一番最初にイメージが浮かんだ話。だからお花(笑)

【2011/01/22 up】