■東かなで五十音【や行・わ行】 東金

 【ヤンデレ】
「── ああ小日向ちゃん、千秋の属性がわかったで」
「えっ、何ですか?」
「『ヤンデレ』や」
「やんでれ…?」
「一般的な意味とは少し違うかもしれへんけど、ほら、千秋の『小日向ちゃん大好きっぷり』はほとんど病気やろ?」
「え……」
 ぽっと頬を赤く染めた彼女の身体が、急に見えなくなった。
「── 蓬生、こいつに余計なことを吹き込むな」
 彼女は憮然とした東金の腕の中にすっぽりと収まっている。
「好きなものを好きと言い、抱きしめたいものを抱きしめる。 それのどこが病気なんだ?  言動に表してこそコミュニケーションが図れるというものだろ」
 抱きしめた彼女の頭にうっとりと頬ずりしている東金。
「……完全な依存症やと思うで?」

(「ツンデレ」のつづき)

*  *  *  *  *

 【誘惑】
「かなで、神南に来い」
「あ……」
「俺と過ごす刺激的な毎日を約束するぜ?」
「で、でも……」
「神戸の美しい夜景もお前のものだ」
「………」
「贅沢だってさせてやるぜ?  まずは神戸牛か」
「……っ」
「お前の気に入りそうなスイーツだっていろいろあるしな」
「── っ!」
 きゅっと両手を握り合わせ、目をキラキラさせている彼女。
「……俺より食い物かよ」
 大きな溜息を吐いて、口元に光るよだれを拭ってやった。

(スイーツの誘惑に勝てる女の子はそんなにいないと思う)

*  *  *  *  *

 【呼ぶ】
「── 東金さん」
 ラウンジで新聞を広げる彼に声をかけた。
 が、反応がない。
 新聞に夢中で気づかないのかな?
「東金さんっ!」
 真正面に立って、新聞越しに呼んでみる。
 え……もしかして、無視?
 それなら──
── ち、千秋さん…?
 呼び慣れてなくて、すごく恥ずかしい。
 かぁっと顔が熱くなる。
「── なんだ、かなで」
 バサリと音を立てて下ろされた新聞の向こうから現れた彼の顔はニンマリ。
 ……してやられた感じがして、なんか悔しい。

(薄○鬼の斎藤くんの真似してみた)

*  *  *  *  *

 【わがまま】
「── 芹沢、茶だ」
「はい」
 いそいそとお茶の準備を始める芹沢くんを気の毒に思っていたら、
「かなで、お前はここだ」
 ぽんぽん、と隣の空いた席を叩く東金さん。
 いつも王様みたいに振る舞う彼は、本当にわがままな人。
 そのわがままもスケールが違う。
 ある朝目が覚めたら、寮の内装がまるきり変わっていたのには驚いた。
 挙句の果てに──
 『命令だぜ? お前は、俺のそばにいろ……ずっと』
 ── だなんて。
 本当にどこまでもわがままだ、この人は。
 そんな命令なくたってずっと一緒にいたい、と思っている私も十分わがままだけど。

(東金千秋−わがまま=?)

【プチあとがき】
 うん、まあ、いろいろと見逃してやってください(笑)

【2010/05/31 up/2010/06/17 拍手お礼より移動】