■東かなで五十音【た行】 東金

 【ダリア】
 イメージと違う?
 確かにそうかもしれない。
 普段の彼女は明るい日差しの中で咲く向日葵。
 だが、ステージに上がれば一転する。
 優雅に咲き誇る、深紅の花。
 美しいその花を大きな束にして贈ろう。
 この手に落ちてくれた感謝を込めて。

(メモブの花束/ダリアの花言葉=「優雅」「感謝」「華麗」他)

*  *  *  *  *

 【地図】
 いつもは授業でしか使わない地図を机の上に広げた。
 ここが、自分の住む横浜。
 そして──
 指先は日本の海岸線を辿って西へ向かう。
 止まった指先に書かれた文字は『神戸』。
「……やっぱり遠いなぁ」
 広い太平洋の上に、涙が1滴、ぽとりと落ちた。

(「今すぐ会いたいよ」)

*  *  *  *  *

 【ツンデレ】
「── 東金さんって……『ツンデレ』?」
 彼女の一言に、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
「いやー、千秋ん場合は『ツン』やないなぁ」
「じゃあ何なんでしょう?」
 考え込む彼らの周囲に沈黙が落ちる。
 しばらくして。
「── まぁ、今は『デレデレ』なんは確かやけどな」
 親友の一言に、今度こそ本当に紅茶を吹いた。

(『オレ様』から『デレ』……『オレデレ』?)

*  *  *  *  *

 【手をつなごう】
 隣を歩いている時。
 いつもいつも、予告なく抱き寄せられてしまうから。
 強引に身体を捩って、彼の腕から抜け出した。
 案の定、ムッとした顔で睨まれた。
「あの……手をつないでもいいですか?」
 私の申し出に、彼はポカンとして瞬きを繰り返す。
「── ああ」
 ちょっとはにかんだように笑って差し出された手。
 そっと重ねると、暑くもないのにちょっと汗ばんでいたのがなんだか嬉しかった。

(意外とときめく瞬間)

*  *  *  *  *

 【陶芸】
 神戸への1泊2日の小旅行の数日後、菩提樹寮に小包が届けられた。
 六甲の牧場で作った陶芸作品。 乾燥と焼きを依頼して、完成したものが送られてきたのだ。
 自分が作ったコーヒーカップは直接故郷の祖父の元へと送ってもらうよう手配してある。 喜んでくれているといいけれど。
 箱から取り出した塊のぷちぷちのビニール包装を解いていく。
 中から出てきたのは動物を模した植木鉢。
「……………」
 動物の顔とにらめっこして………小学生の方がもっと上手に作れそうだ、と思わず吹き出した。 何度見ても勝てる気がしない。
 窓の手前のぬいぐるみの隣にことんと置いて。
「……結局、これって何の動物なんだろう?」
 いくら首を傾げても、答えは出てこなかった。

(芸術家千秋の作品はカタストロフ級(笑))

【プチあとがき】
 あ、今回いちゃいちゃ度が低いなぁ(笑)

【2010/04/30 up/2010/05/07 拍手お礼より移動】