■かれかの☆いんたぁみっしょん【3:芹沢 睦の毒吐き日記】
※「彼と彼女と彼のツレ【1】〜【8】」+「いんたぁみっしょん【1】〜【2】」のまとめ(?)
【8月2日】
最終の新幹線で横浜へ。
車内でセミファイナル進出が星奏と天音に決まったと伝えると、部長は嬉しそうに笑っていた。
自分も星奏が残ってくれてよかったと思う。
敗退校の寮でコンクール中過ごすのは、さすがに気を遣いそうだから。
到着した寮は相当の年代物、部長も副部長も気に入らなかったらしい。
家具屋や内装屋への連絡でてんてこ舞い。
セミファイナルの前に過労死しそうだ。
【8月4日】
説明会の後、近くの公園で横浜初ライブ。
いきなり大勢のギャラリーに囲まれ、歓声を浴びる。
昨日寮で見かけた星奏の女子がだらだら涙を流して泣いていた。
部長が面白がって彼女を『地味子』と呼ぶ。
言いえて妙だと思う。
あんな地味な1st相手なら勝負にならないのではないだろうか。
だが、部長は地味子のことを気に入ったらしい。
本当に眼中にないのなら、あんなに執拗にからかったりしないだろう。
【8月6日】
寮の庭でバーベキュー。
自作のたれを誉められた。
上質の肉は柔らかくておいしかった。
やっぱりバーベキューは野菜より肉がメインだと思う。
星奏の副部長の作った焼きそばもうまかった。
……少し悔しい気がするのはなぜだろう。
【8月7日】
地味子が作った『葛まんじゅう』を食べた。
甘さ控えめのかぼちゃの餡と、つるんとした葛が絶妙だ。
なぜか部長の様子が変だった。
葛まんじゅうは口に合わなかったのだろうか?
【8月9日】
地味子に変な質問をされた。
『音楽に恋は必要か』
そんなこと聞かれても。
副部長にからかわれる部長の反応が面白い。
どうやら部長は地味子のことが好きらしい。
これまで部長は特定の女子に入れ込むことはなかったのに。
なかなか面白い現象だと思った。
【8月11日】
あの3人の仲が険悪そうだ。
触らぬ神にたたりなし。
しばらく練習以外で近づかないようにしよう。
【8月12日】
セミファイナルへ向けた練習は明日のみ。
今日は朝からスタジオを借りきっていたというのに、部長が現れたのは昼をずいぶん過ぎてからだった。
副部長は何を遠慮しているのか、文句を言わなかった。
大遅刻をした部長は気持ち悪いくらい機嫌がよかった。
何があったのかは知らないが、たぶん地味子が絡んでるんじゃないかと思う。
【8月15日】
悔しい!
セミファイナルで星奏に負けた。
地味子の演奏は、全然地味ではなかった。
悔しいけれど、いい演奏だったと思う。
だが、まだ部長のソロ決勝の伴奏という大役が残っている。
気持ちを引きずらないようにしなければ。
最近の部長の行動は見ていて面白い。
今日も演奏が終わったらすぐに反対側の袖へダッシュ。
地味子を激励に行ったらしい。
副部長がひーひー言いながら笑っていたので何事かと思ったら、
向こうの袖にデレデレに溶けた顔の部長が立っていた。
普段からタレ目だと思っていたが、今日は3割増しでタレていたと思う。
腹がよじれるくらい笑った。
室内楽部門の打ち上げをしようということになったのだが、部長はどこを探しても見つからなかった。
星奏のメンバーも地味子を探していた。
『ふたりで一緒に花火見とるんやろ』と副部長が言うので、放っておくことにした。
深夜近くになって、部長の部屋の扉が閉まる音が聞こえた。
そんな時間まで二人で一体何をしていたのやら。
【8月16日】
二人はどうやら収まるところに収まったらしい。
副部長の話によると、アイスを持った地味子を膝に乗せ、口を開けて『あ〜ん』とかやっていたそうだ。
あの部長がそんなバカップルになるとは……『恋』というものは人を狂わせるのだろうか。
恐ろしいことだ。
【8月17日】
寮に戻ると至誠館の水嶋が地味子に抱きついている場面に遭遇。
部長の行動は速かった。
ダッと飛び出したかと思うと、深く踏み込んで、ぐんっと伸び上がる。
砲丸投げの投球フォームのように手を突き出して。
地味子に覆いかぶさる水嶋の額に鮮やかな掌底突きがクリーンヒット。
ヴァイオリンだけじゃなく体術も極めているとはさすがだ。
けど、その後がいただけない。
『俺のマイラバー』とかなんとか超恥ずかしい発言。
部長のことを尊敬してはいるが、最近の部長とはあまり一緒に行動したくないと思った。
〜つづく?〜
【プチあとがき】
ちょっとしたお遊び。
【2010/04/06 up/2010/04/16 拍手お礼より移動】